コラム

インフルエンザのおはなし

みなさまこんにちは。院長の原田です。

おかげさまで早いもので、開院から1か月が過ぎました。地域のみなさまにおかれましては温かいご支援をいただき、あらためて感謝申し上げます。これからも地域の健康を守るために、質の高い医療を提供してまいります。

さて、いよいよインフルエンザが増えてきましたね。

当院の発熱外来を受診される方も徐々に増えており、検査を受けた方のインフルエンザ陽性率も日に日に上がってきています。みなさまもくれぐれも感染しないよう、ご注意ください。

循環器疾患の方はインフルエンザに要注意

インフルエンザ感染は、関連疾患の悪化も含めると毎年1万人の死者を生み出すと言われています。特に心筋梗塞や心不全などの循環器疾患は、インフルエンザ感染をきっかけに悪化することが知られています。ある研究によれば、インフルエンザ感染後1週間以内は心筋梗塞の発症率が約6倍に増えると報告されています。このため、循環器の分野ではインフルエンザ予防が非常に重要視されています。とりわけ、その予防の中心となるのがインフルエンザワクチンの接種です。

 

インフルエンザ予防の第一選択はワクチン接種です

インフルエンザワクチンは、厚労省が推薦する感染予防のファーストチョイスです。また、感染予防効果はもちろん、重症化予防効果が高いことが知られています。インフルエンザ感染は、発熱を伴う全身の炎症を引き起こしますが、これらの免疫反応が動脈プラークの破綻や心負荷の増加をもたらし、それぞれ心筋梗塞や心不全による入院を増やすと言われています。インフルエンザワクチンは、このような免疫反応を抑えることで、循環器疾患をお持ちの方の命を守ります。予防効果は接種から2週間で出始め、5ヶ月ほど持続するといわれています。たかがインフルエンザと軽視せず、ご自身とご家族を守るためにもインフルエンザワクチンを毎年接種しましょう。当院では、開院初年度ということもあり、周辺医療機関よりも安価に提供しておりますので、ぜひご来院ください。

抗インフルエンザ薬の最適な投与時期は、発症48時間以内です

インフルエンザは予防が大切ですが、それでも感染してしまうことはあります。その際に頼りになるのが抗インフルエンザ薬です。日本では幸いにも抗インフルエンザ薬を容易に処方できる環境にあります。主な薬剤を次項に記しますが、いずれの薬剤も「発症48時間以内」の投与が必要です。なぜなら、「ウイルスは発症48時間で増殖し切ってしまう」からです。この時期以降に投与してもウイルスのさらなる減少効果はほとんど見込めません。「増える前に叩く」ことが重要ですので、我慢せずに早めの受診をお願いいたします。

 

抗インフルエンザ薬は「1回投与で完了」が主流です

当院では、どのような薬剤でも「自分の家族に投与するならこの薬剤」と院長が考える、コストパフォーマンスと安全性の高い薬剤を処方するようにしています。このような観点から、抗インフルエンザ薬については、投与の簡便性や耐性ウイルスの少なさを考慮し、イナビル®を中心に処方しています。この薬剤は「1回吸入すると5日間効果が持続する」吸入薬です。また、耐性ウイルス(効果のないウイルス株)も非常に少ないことで知られており、「吸入が上手にできる方」であれば最初にお勧めしています。もちろん「以前からこの薬剤が体に合っているから処方してほしい」といったご希望があれば、他の薬剤も処方いたします。ぜひお伝えください。

薬剤名

ラニナミビル
(イナビル®)

バロキサビル
(ゾフルーザ®)

オセルタミビル
(タミフル®)

ザナミビル
(リレンザ®)

投与経路

吸入(ドライ粉末)

経口

経口

吸入(ドライ粉末)

投与回数

1回のみ

1回のみ

1日2回×5日

1日2回×5日

長所

- 1回投与でアドヒアランス極めて良好
- 耐性報告が極めて少ない

- 1回投与でアドヒアランス極めて良好
- 作用機序が新規

- 内服が容易
- 実績が最も多い

- 吸入のみで全身曝露が少なく副作用少

短所

-吸入操作に習熟必要(乳幼児・高齢者では困難)

- 耐性変異の出現率が高い(特に小児)

- 5日間継続必要

- 吸入機器使用が煩雑

薬価目安

約2,100円/1回

約4,800円/1回

約1,900円/5日分

約2,300円/5日分

 

早期診断の新兵器。痛くないAIインフルエンザ画像診断「nodoca」のご紹介

インフルエンザの治療薬は、発症から48時間以内に服用を開始すると効果が高いとされています。このため、可能な限り発症早期に診断を確定させ、治療を開始することが大切です。

しかし、これまでのインフルエンザ検査では、感染のごく初期に検査をした場合、体内でウイルスがまだ十分に増殖していないため「陰性」と出てしまうことがよくありました。つまり、実際には感染していても、「陰性」となるのです。このような偽陰性を回避するために、以前は「もう少しウイルスが増殖するのを待ってから検査をする」という対応が行われ、結果として治療が遅れることが課題となっていました。

この問題の解決策として最近注目されているのが、インフルエンザ画像診断「nodoca」です。これは、のどの撮影(と問診)だけでインフルエンザを診断できるAI医療機器です。保険診療として厚生労働省に認可されており、感度・特異度ともに十分な精度が得られています。この機器の特徴は、「痛くない」だけでなく、抗原検査が有効でない感染早期にも診断が可能であることです。発症早期はウイルス量がまだ少なくても、発熱や咽頭のリンパ濾胞の腫大が生じます。このリンパ濾胞の有無で診断することができるのです(下図は院長が作成したイメージ図)。

nodocaの診断料は抗原検査とほぼ同額(3割負担で1,000円弱)です。診断時間は撮影10秒、問診、データ入力などを含めると5〜10分程度です。

痛くない+結果が早い+早期治療の味方「nodoca」。発症12時間以内でしたらぜひご利用ください(発症24時間〜48時間であれば、従来通り抗原検査をお勧めいたします)。